論説

神戸市のヤミ専従(違法専従)問題について

―――「神戸市役所一家体制」を見直すことが重要です―――

高橋ひでのり

1.ヤミ専従は違法行為で許されない

神戸市職労のヤミ専従問題が大きな問題となっています。私はいまだにこのようなことが行われていたことに大きな驚きと怒りを感じています。

ヤミ専従は地方公務員法や労働組合法、神戸市条例に違反するものですし、給与の詐取ともいうべき行為で絶対に許されるものではありません。

2.ヤミ専従は当局と組合との癒着、なれ合いによって行われた

ヤミ専従は当局の承認の下でしか行うことができません。問題が報道されてから神戸市当局が発表した情報によってもそれは明らかです。当局と組合が癒着し、なれ合いの中で行われてきたものであり、労働組合運動とは無縁なことです。

市職労も多くの真面目な一般職員(組合員)には知らせず、何人かの幹部を中心としたなれ合い、癒着体質が続いていました。しかも特定の市職労幹部が強大な影響力をもち、ものが言いにくく、情報が伝わらない組織となっていました。スポーツ界のパワハラ事件と似た構造がこの癒着を支えてきたのです。

3.ヤミ専従問題は単なる癒着、なれ合い問題ではない

それではなぜこのようなことが続けられてきたのでしょうか。ヤミ専従が当局と組合の不適切な癒着、なれ合いであることは間違いありませんが、問題はそれだけではありません。組合が市の施策に協力または理解を示すことと引き換えに、当局が組合に利益供与を行ってきたのです。いわば悪しき「神戸市役所一家体制」の典型ということができます。

この「神戸市役所一家体制」の問題点は、とりわけ阪神・淡路大震災以降、より一層明らかになってきます。神戸空港問題など、批判が集中した神戸市政を擁護したのは他ならぬ神戸市職労でした。被災者や市民の立場に立つのではなく、市の施策に協力することで労働条件を守るという本来の労組の在り方ではないことが行われてきたのです。そして、当局も積極的にそれを利用して施策を推進し、市長選の際は現職を推薦し、選挙活動の中核を担うことでなれ合い、癒着が進み、ヤミ専従が双方の同意のもとで実施されたのです。

市政への批判を抑え込む役割を労働組合が果たすことにより一定の労働条件の維持・改善を図ってきたということ自体が何より問題であり、ヤミ専従問題の本質はここにあるといって過言ではありません。このような不正常な関係は根絶されなければなりません。

また、久元市長はヤミ専従を知らなかったとしていますが、信じられません。1期目の市長選挙の時に当時の市職労委員長とともに市役所の職場を回っていました。総務官僚としてヤミ専従問題を熟知していた久元市長が、神戸市のヤミ専従だけは知らずに「共闘」していたのでしょうか?仮に知らなかったとしてもその責任を免れることはできません。

4.自治体での組合活動は重要な役割を果たす

自治体の中での職員の組合活動は重要であり、自治体で働く労働者の権利や労働条件を守るとともに、貧困や福祉、地域の活性化、災害対策など地域の様々な課題についても当局とは違った視点で積極的に取り組み、提言し、地域住民とともに問題解決のための活動をすることは重要な役割です。また、近年増加している自治体での非正規職員の労働条件の改善や権利擁護に取り組むことも喫緊の課題ということができます。

ですから、そのようなことを無視した職員たたき、組合たたきには賛同できません。職員は市民の権利や生活を守るためにこそ仕事をしているということを再認識して、現在の施策や仕事の中身を再点検し、市民のニーズに応えることを最優先した姿勢を徹底し、癒着・なれ合いから縁を切り、労組はその本来の立場に立ち返って生まれ変わってほしいと希望しています。

5.これまでの私の取り組み

私は、神戸市職員在職中から、このような市当局と組合の癒着・なれ合いを強く批判してきました。とりわけ、阪神・淡路大震災後の神戸市の被災者の生活を無視した施策、神戸空港推進の方針を批判して活動を行ってきました。

避難所生活者に対して生活保護を求める取り組みを職場で行っていた時です。神戸市職労の幹部が「もうやめてくれ」と圧力をかけてきたのです。その理由が「このままだと神戸市当局が業務についての交渉に応じないと言っている」ということでした。その後私は不当な配転処分を受けたため、その撤回を求めて、人事委員会や裁判で争いました。

残念ながら敗訴しましたが、人事委員会の審理や裁判には多くの被災者の方が支援の傍聴に駆けつけてくださり、本当に力づけられるとともに、市民のために仕事をしていく決意を固くしました。しかし、逆に私に圧力をかけるために当局の応援団として傍聴に動員をかけてきたのは何と神戸市職労でした。

このような、「市役所一家体制」に反対して、市職労の委員長選挙にも立候補し、現執行部派に敗れましたが一定の支持を得ることもできました。また、内部で違法行為を通報する公益通報制度についても、神戸市の制度が実効性のない骨抜きのものであることを批判して、制度改善の申し入れをするなど市内部でも取り組んできました。

6.市当局と労組の責任を明らかに

今回の事件で弁護士による第三者委員会が設立され、調査を行うこととされています。詳細はその結論を見る必要がありますが、一部職員に責任をなすりつけて、トカゲのしっぽ切りのような処分で終わるようなことがあってはなりません。

問題はなぜ「神戸市役所一家体制」ともいうべき不正常な関係が続いてきたのか、その実態と背景を解明・検証していく必要があります。それがなければ、市民のための市政への転換は不可能です。

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